その頭痛もしかすると虫歯が原因かもしれません
虫歯と頭痛について考えてみたいと思います。虫歯の痛みを伝える歯髄歯という組織はまさに神経です。神経には二通りあって、筋肉運動をさせる神経と脳に痛みを伝える神経があります。歯髄は、鋭い痛みを脳に伝える過敏な神経です。しかも、脳のすぐ近くにありますね。神経伝達は電気信号ですから、脳に近い鋭い痛みを伝える神経のある歯が重度の虫歯になってしまえば、頭まで痛くなるという事が起こっても不思議はありません。
まだ完全解明されていないといわれている頭痛について考えてみたいと思います。
目次
虫歯によって引き起こされる頭痛とは?
「冷たいものが凍みる」「ものを噛むと痛い」など歯痛の種類にも様々あり原因も様々です。
虫歯をずっと放置していることで慢性的な歯痛のみならず、歯髄炎になることもあり、これが頭痛を生じさせることもあります。
また、上顎の虫歯が進行することで根尖から上顎洞に達した虫歯菌が上顎洞粘膜を感染させて炎症を起こすことがあります。これの病気を上顎洞炎といいます。副鼻腔炎(蓄膿症)という病気と同じものです。これは、篩骨洞にまで広がることもあり、ときに頭痛の原因となります。
はっきりとした「歯」と「頭痛」の関連性は不明です。そもそも頭痛そのものがはっきりと解明されているわけではありません。例えば、「すごく嫌な思い出を思い出したときに頭が痛くなる」ことがあります。少なくとも私にはそのような経験がありますが、これは科学的には作用機序が解明されていません。しかし、google検索結果を見ても多くの人が虫歯による頭痛で悩んでいるのがわかります。
虫歯の痛みには頭痛薬が効くのでしょうか?
歯科医院で処方される主な3つの痛み止めを添付文書で調べてみると、ポンタールやカロナールは、「歯痛にも頭痛に効く」ことが明記されていますが、ボルタレンは頭痛に効くとは記されていません。製薬会社によると「ボルタレンは歯痛には効くが、頭痛には効かない」ということです。
【薬剤名】ポンタール
【一般名】メフェナム酸製剤
【効果・効能】
①手術後及び外傷後の炎症及び腫脹の緩解
②下記疾患の消炎、鎮痛、解熱
変形性関節症、腰痛症、症候性神経痛、頭痛(他剤が無効な場合)、副鼻腔炎、月経痛、分娩後疼痛、歯痛
③下記疾患の解熱・鎮痛
急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)
(2013年10月改訂版)
【薬剤名】カロナール
【一般名】アセトアミノフェン
【効能又は効果】
①下記疾患並びに症状の鎮痛
頭痛、耳痛、症候性神経痛、腰痛症、筋肉痛、打撲通、捻挫通、月経痛、分娩後痛、がんによる疼痛、歯痛、歯科治療後の疼痛、変形性関節症
②下記疾患の解熱・鎮痛
急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)
③小児科領域における解熱・鎮痛
(2018年12月改訂第13版)
【薬剤名】ボルタレン
【一般名】ジクロフェナクナトリウム
【効能又は効果】
①下記の疾患ならびに症状の鎮痛・消炎
関節リウマチ、変形性関節症、変形性脊椎症、腰痛症、腱鞘炎、頸肩腕症候群、神経痛、後陣痛、骨盤内炎症、月経困難症、膀胱炎、前眼部炎症、歯痛
②手術ならびに抜歯後の鎮痛・消炎
③下記疾患の解熱・鎮痛
急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)
2016年7月改訂(第16版)
ボルタレンは、頭痛薬に聞くのでしょうか?
ボルタレンは、「炎症や痛み、発熱の原因とされるプロスタグランジンという生体内の物質」を減らす作用を発揮します。これにより、炎症や腫れ、筋肉や関節の痛みを軽くし、発熱がある場合は熱を下げるのです。
この痛みを引き起こす原因物質であるプロスタグランジンを減らすなら、「ボルタレンは頭痛に効くのではないのか?」と考えるのが普通ですね。
しかし、添付文書には「頭痛に効く」とは一切書いていません。ボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)は、片頭痛にはあまり効かないことが知られています。
しかし、頭痛の種類によっては効果があるという考えもあり、「片頭痛」や「緊張型頭痛」の病名で医師の裁量により処方されることもあります。このあたりの話に興味のある方は、かかりつけの医師、薬剤師に聞いてみて下さいね。
虫歯によって引き起こされる頭痛の対処法とは?
皆さんは、頭痛が生じた時にどのような対処をしていますか?
内科で原因の診断を受ける人もいるでしょうし、鎮痛薬を飲んで様子を見る人もいることでしょう。
一口に「頭痛」といっても、クモ膜下出血や脳腫瘍などでも頭痛が出現します。このような場合に頭痛薬を飲んでやり過ごすことはいけませんね。
このような重大な病気がないのによく頭が痛くなるという「慢性頭痛」は首や頭部周辺の筋肉の緊張や、頭部の血管の拡張などによって起こると考えられています。緊張型頭痛と片頭痛は、混在する人もいるそうです。
原因が様々なのに「頭痛」という一つの症状が出るのですから、「頭痛は完全には解明されていない」といわれるのも理解できます。
しかし、痛みが出ればまずは痛みを止めることが大切です。そういった意味でも頭痛薬などの痛み止めを服用することは必要でしょう。
しかし、痛みが取れて終わらせて良い頭痛もあれば、病気がもとで痛んでいる頭痛もあるのですから、放置はできないわけです。虫歯による歯髄炎が原因で生じる頭痛の場合には原因除去、すなわち抜髄などの虫歯治療が必要になります。
繰り返しますが、頭痛が治まったからと言って頭痛の原因を放置しないで下さい。原因を排除しない限り慢性的に痛み続けます。特に体の免疫力が下がっている時には、細菌と戦う力が低下しているため、細菌感染の勢いがついてしまうのが怖いです。炎症巣が酸性に傾くと、麻酔薬の効きもわるくなり、なかなか鎮痛薬も効きづらくなることがあるので速めの対処が必要となります。「いよいよ我慢できなくなったら科歯科医院を受診した」というまで、悪化させないで下さい。治るのを待とうと思わないで欲しいのです。
虫歯による歯痛と頭痛が生じた時の注意事項
「歯が痛い!」という主訴で、駆け込み急患で来院される患者さんの多くが「最初歯が痛んだ時は様子を見ていたら痛くなくなった(治った)がしばらくしてからまた痛み出した」と口にしますが、ここに大きな間違いがあります。
痛くなった時点で歯に何らかの問題が生じていることはほぼ間違いないわけですから、この時点での受診をお勧めします。虫歯は様子を見ていても治癒することはありません。どんどん進行して行く一方なので早期発見早期治療が肝心です。
といっても、「放っておいたら痛くなくなったよ」という経験をした方がいます。その経験が「また痛みが消えるまで放っておこう」という発想になるのかも知れません。
この時、歯に何が起こっているのか考えてみましょう。すべてが同じではありませんが、一例を挙げましょう。
虫歯の進行は歯髄炎になり、さらに進んで歯根膜炎になったケース
痛みが一時的になくなったのは虫歯菌によって侵された歯の神経がとうとう死んでしまったからです。死んだ神経は当然痛みを感じる機能がなくなってしまった状態なのです。ここまで進行した重度の虫歯は、歯の神経症状がなくなるために、頭痛も消えていることでしょう。しかし、虫歯という感染症がさらに進行したのですから、頭痛が治ったといっても安心しないで下さい。
神経を失活させた細菌はさらに繁殖し、歯根の先端から骨の方に出ていき、歯根膜に広がります。すると免疫が戦い始めますが、根管内には血流がないために、根管内の細菌を攻撃できません。終わらない戦いが続き、細菌と体の抗体が常に戦っている状態ということになります。
普段は自分の持つ抗体のおかげで腫れたりすることはないかもしれませんが、体調を崩した時や寝不足などで体が弱っている時には自身の抗体だけでは細菌に対応することが出来ず、腫れたりうずいたりすることがあります。この状態まで悪化した場合には、痛み止めを飲んでも鎮痛薬の効果は出にくくなるのです。
「薬を飲んでも痛みが取れない」といって歯医者に駆け込む人がいますが、「痛くなったら歯医者に行こう」とか、「もっと悪くなったら通院しよう」という考えを持っているなら、これは推奨されませんね。
鎮痛薬が効かないということは、麻酔も効きにくいのです。腫れている時の抜歯は麻酔が効きにくく痛みを伴うため、また、抜歯後に余計腫れたり、痛みが出たりする懸念がありますので、一般的には抗生物質を投与して腫れが引いたのちに抜歯を行います。
大切なので繰り返しますが、「悪化させてからの来院では遅い」のです。早めに対応することで、大きな虫歯にならず腫れたりすることもないのですから早めの対処をおすすめいたします。
まとめ
歯と頭が痛いときは、「虫歯による歯の痛みが先なのか、頭痛があるから歯まで痛むのか?」わからないこともありますよね。頭痛を止めるために痛み止めを飲むことは必要です。痛みを我慢することにメリットはありません。しかし、クモ膜下出血や脳腫瘍などでも頭痛が出現しますので、いったん痛みが治まったからといってやり過ごさないで下さい。そして、虫歯があればこの機会に虫歯治療のため歯科医院を受診しましょう。
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