親知らずの虫歯は放置すると危険!?
歯科医が教える「抜歯すべき親知らず」と「そうでない親知らず」の違いについて。知っておきたい親知らずの虫歯を放置してはいけない理由と気になる抜歯の方法を生え方別にご紹介。腫れる?痛い?抜歯に関するあなたのお悩みを解決いたします。
親知らずに気付かないうちに虫歯が!痛くなければ放置しても大丈夫?
親知らずとは顎の1番奥に生えてくる歯で個人差があるものの、思春期ごろから成人を迎えるころに生えてきます。生え方によってはしっかり萌出してこないこともあり、親知らずが生えてないように見えることもあります。
親知らずに限らず、どの歯が虫歯になってもその虫歯を放置することはよくありません。
なぜなら、虫歯は放っておいても自然治癒すること(自然に治ること)がないからです。
放置しておくと悪くなってく一方ですから、何らかの処置が必要となります。
治療方法は、大きく分けて2つ「虫歯治療」か「抜歯」です。
生え方や虫歯の度合い、周りの歯の状況などの口腔内環境によって「虫歯治療」で残せるか「抜歯」した方がいいかが判断されます。
▼虫歯治療で対処できる場合…対合としっかり噛めていて虫歯が大きくない親知らず
まっすぐ完全にしっかりと生えている状態で対合歯(噛む相手の歯「上顎の対合歯は下顎、下顎の対合歯は上顎となる」)としっかり噛めている状態の場合には虫歯治療をして残します。
歯は対合歯としっかり噛めて初めて役目を果たします。上だけあっても下だけあっても噛めなければ意味がありません。対合歯と噛んでいない親知らずを抜かずに残すメリットはほとんどありませんが、しっかり噛めているのであればそれが抜かずに残すメリットとなります。
▼親知らずは虫歯になりやすい!
親知らずは一番奥に生えているため、歯ブラシが当てづらく最も虫歯になってしまいやすい歯です。プロでもブラシを当てるのが難しい場所ですから仕方がありません…。せっかく治療してもまた虫歯に…。なんてことも起こりやすいのです。
頬の粘膜や舌が視界をさえぎってしまうため、治療もとてもしづらい箇所になります。ですから、治療に時間がかかってしまうことも多く、器具が入りやすいように大きく口を開けなければならないこともあって患者さんにとっての負担が大きくなってしまいます。
▼抜歯した方がいい親知らず…生え方が悪い場合や重度の虫歯/歯周病の場合
親知らずの生え方にはいくつかあり、しっかりと生えてこない場合があります。真横に生えている場合や手前の歯にぶつかって生えてこられない場合、半分は生えていて半分は歯肉がかぶっている生えかけの場合には、とても清掃性が悪く不潔になりやすいので虫歯や歯周病になるリスクが上がります。そのため、このケースでは抜歯をオススメする歯医者が多いかと思います。
▼痛んでから歯医者にいくと抜歯できない!?
風邪や疲労によって免疫力が低下しているときに痛くなったりうずいたりする親知らずですが、体調が回復すると症状が緩和されることがあるため、つい我慢してしまったり歯医者で診てもらうことを後回しにしてしまっていませんか?
親知らずが痛んだりうずいたりする理由は多くの場合歯肉の炎症によるものです。ブラッシングしにくく不潔状態なりやすい親知らずではよくあることです。不潔になっている部分の歯肉に炎症が起きて腫れてしまうことが痛みの原因となるのです。
「親知らずが痛いから抜歯してください。」と来院される方がいらっしゃいますが、多くの場合その日に抜歯することはできません。なぜなら、炎症が起きていて痛みがあるときに抜歯をすると、抜歯後に炎症がさらに悪化するおそれがあるからです。ですから、まずは抗生剤(トミロン、クラリスロマイシンなど歯科医院しよって様々)が処方され3日から1週間ほど服用して炎症がおさまるのを待ちます。抜歯は炎症がおさまってから行うのが一般的です。
抗生剤の特性上、効果がすぐに現れないこともありますが必ずしっかりと指示通りに服用するようにしましょう。大概、3日から5日程度で効果が現れてくるはずです。
親知らずのせいで周りの歯にも悪影響が…
親知らずが虫歯になってしまった場合には抜歯すればいいですが、親知らずの手前の歯(第二大臼歯)が虫歯になってしまったらどうでしょう。親知らずと違って重要な役割を担う第二大臼歯は簡単に抜歯しましょうとはいかないので厄介です。
通常成人の永久歯は上顎で14本、下顎で14本の計28本萌出しており噛む働きをするうえで重要な役割を担う歯なのです。もちろん第二大臼歯もその中の1歯ですから大切にしていかなければなりません。
親知らずと第二大臼歯との間に虫歯ができてしまい来院される患者さんが多くいらっしゃいますが、これは非常に残念なことです。なぜなら、親知らずと第二大臼歯との間の虫歯とはつまり第二大臼歯の奥側の面の虫歯のことであり、視野が悪くとても虫歯治療のしにくい箇所であるためです。また、歯ブラシを当てるのも難しいため、虫歯治療しても再び虫歯になりやすくなってしまいます。
また、第二大臼歯大きな虫歯で抜歯になってしまった場合にはブリッジという方法は出来ないためインプラントか義歯を選択せざるを得なくなります。
歯ブラシがうまく当たらず不潔になることで歯肉に炎症が起きて腫れたり痛んだり虫歯になってしまったりと何かと問題が多く生じますが、歯周病もまた不潔によって生じる問題の1つです。
全体的に歯周病の数値が正常でブラッシングもしっかりできているのに親知らずの箇所だけ歯周病数値が高い場合には親知らずが原因と考えられます。
歯周病初期は軽度であるため歯肉に炎症が起きたりする程度で、ブラッシングで改善できますが進行していくと歯の周りの骨を溶かしてしまうので歯周病の数値が高い方は早めの抜歯がオススメです。(歯周病の数値は歯医者ではかってもらうことができます。)
▼親知らずで歯並びが悪くなる!?
歯の並ぶ位置は幼少期の指しゃぶりや下唇を噛むなどの癖や舌の大きさ、顎の大きさなど様々なことが関連して定まりますが、顎の大きさに対しての歯の生えるスペースは最も関連性が深いため親知らずが生えてくることによって歯列が乱れてしまうことがあるようです。
抜歯は痛い?抜歯後は腫れる?
親知らずの抜歯と聞くと「痛い」「腫れる」というイメージから怖いと感じ抜歯をためらってしまうかたも少なくないでしょう。初めての抜歯はとても不安ですよね。
しかし実際はしっかり局所麻酔で痛みを感じない状態にしてから抜歯を行いますから「痛み」を感じることはありませんし、抜歯後にのたうち回るほどの痛みが生じることもありません。抜歯後に麻酔が切れて痛んだとしても鎮痛剤を服用すればおさまる程度の痛みですからご安心下さい。(痛み止めは抜歯後歯科医院で処方されます。)
抜歯後の「腫れ」を心配される患者さんもいらっしゃいますが、これはケースによります。
難しい抜歯の場合には、外科的侵襲も大きくなりますから若干腫れたりすることはもちろんあります。
生え方によって抜歯の方法や難易度、外科的侵襲も異なります。数分で簡単に抜けるような生え方をした親知らずもあれば、難しい方向に生えていたり抜歯の難しい根形態をしていたする親知らずもあるのです
では自分歯はどうでしょうか?これはレントゲンを撮影して根の状態や埋伏の程度など様々なことを確認してみないとわかりません。ですから、抜くか抜かないかは別として「まずは歯医者さんで診査診断してもらうこと」をオススメします。
診断結果から抜歯の方法やリスク抜歯後のことなどについて詳しく説明してもらえるでしょう。そこで抜歯するかしないか歯科医師と相談して決断するとよいでしょう。
難易度別4つの抜歯方法
▼難易度1;まっすぐしっかり生えている場合
▼難易度2;半分だけ生えている場合
▼難易度3;横に生えているが神経に近くない場合
▼難易度4;横に生えていて神経に近い場合
まとめ
親知らずが生えているのを発見したときは、まず歯医者を受診して「抜歯したほうがいい歯」か「抜歯する必要のない歯」なのかを診断してもらい、その後で歯科医師とともに治療の方針を立てていきましょう。
親知らずに虫歯があり虫歯治療して残すことになった場合には、虫歯治療後も不潔による二次カリエス(治療したところが再度虫歯になること)のリスクが心配されますので意識的に歯ブラシを当てることを心がけましょう。
抜歯したほうが良いと診断された場合には恐れずに早めに抜歯しましょう。放置してしまうとその影響がほかの歯にも。他の歯を守るためにも勇気を出して抜歯に臨んでくださいね。
コメント..