クラウンの虫歯再発を防止したい!治療した歯が再発する時期とその対処法
皆さん「虫歯になってしまっても一回治療すればもう虫歯にならない」なんて思っていませんか?
実は一度虫歯治療した歯が再度虫歯(二次カリエス)になってしまうリスクは健全な歯が虫歯になってしまうリスクに比べて高いのです。そこで、今回は虫歯治療した歯は平均何年で再度虫歯になるのかをお知らせし、その対処法を説明します。
治療した歯は一生持つわけではありません
虫歯治療により修復された歯は、何年くらい持つのでしょうか?できれば一生持てば良いと願うものですが残念ながら実際には一生持たない場合が多いです。
平均的な虫歯治療後の長持ち度合いは統計調査により分かっています。
根拠となるのは、岡山大学の森田教授が、岡山市と名古屋市の10歯科医院において3120本の歯を調べて出した修復物の耐用年数の論文です。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jdh/45/5/45_KJ00003900294/_pdf/-char/ja
この調査により、虫歯治療後に再治療が必要となり、治療されるまでの期間は、約6 .9 年ということが分かりました。歯の修復物ごとにみていくと次の通りです。
- レジン / 5,2年
- インレー / 5.4年
- 鋳造冠 / 7.1年
- アマルガム/ 7.4年
※インレー;部分的な修復物 鋳造冠 ;金属の被せ物
アマルガム;金属の詰め物 レジン :プラスチック素材
インレーやレジンの約3 割は, 5年以内で再治療されていました。
鋳造冠やブリッジの約40 % は5 年以内で再治療されていました。
また、前歯の白い歯については、自費の歯(セラミック冠)が, 保険の歯(継続歯やジャケット冠)と比べて約2 倍使用年数が長かったことが明らかになりました。
【解説】結果だけを見た人の思い込みが入るといけませんので、解説します。
結果を見ると、アマルガムが長持ちに見えますが、集計を取った時代のアマルガムは、麻酔をせずに済むような小さな虫歯治療に多用されていました。大きい虫歯はインレーで修復していました。つまり、材料差よりも、虫歯の大きさが関係しているとも読み取れますね。材料だけにとらわれないで論文を理解する必要があります。同じ大きさの虫歯を異なる材料で修復した調査ではないのでご注意下さい。
論文中にも「レジンよりもアマルガムのほうが勧められるとかという結論には至らない」と記載されています。
論文を理解する上で重要な点がもうひとつあります。「再治療された歯だけを調べて出した数字」ということです。つまり、治療後虫歯治療された歯でも二次カリエスにならなかった歯は、再治療されていませんから、この論文の数字に反映されていないのです。
分かりやすく言えば、「すべての平均を取ったのでなく、二次カリエスになって問題の出た歯の平均年数の調査」ということですが、細かいことを抜きにしてこの数字を信じてよいでしょう。
皆さんの多くは「今回の治療で歯を治したら一生持たせたい」と思うものですが、鋳造冠が平均7.1年で再治療ですから、7.1年以上生きる人は一生持たない可能性があるという結果に驚く事でしょう。
しかし、これから治す歯は、現在はこの調査の時代よりも、支台築造の技術やセメントの性能が進歩していますので、良い結果が出ると思われます。
次に治した歯が二次カリエスになる様子をみてみましょう。
二次カリエスとは
一度虫歯の治療をして、詰め物や被せ物で修復している歯は数年後に再度虫歯(二次カリエス)になってしまうことがよくあります。治療した歯が再び虫歯になった状態を二次カリエスといいます。
上記の写真は治療してから5年以上経過している歯です。補綴物と歯との間が黒っぽくなっているのが見えます。これが二次カリエスです。修復物の段差に汚れがたまりやすくなり、器具で触ってみるとひっかかる感じがあります。そこに虫歯菌が繁殖し、歯を溶かして二次カリエスとなるのです。
上記の写真も治療してから5年以上経過した後の歯です。先ほどの歯とは違ってこちらの左写真に写っている歯は虫歯がないように見えます。しかし、右のレントゲン写真を見ると段差になっているのがわかるかと思います。このように、目視だけでは気付かない虫歯もレントゲンを撮影することで確認できます。
二次カリエスの原因(セメントの劣化)
しっかり治療しても再度虫歯になってしまうのは一体なぜでしょうか?
多くの原因は補綴物を装着するときに使用する接着剤やセメントの劣化です。歯科材料に限った話ではないですが、どんな材料と時間の経過とともに劣化します。ましてや、口腔内の環境は「冷たいもの/温かいもの」「酸っぱいもの/甘いもの」など食事によって急激に大きく変化します。それによって、セメントや接着剤や補綴物はわずかながら膨張と収縮を繰り返しますので材料にとって過酷な環境なのです。そう考えると材料が数年で劣化
してしまうのも無理ないですね。
ここで問題視すべき点は、セメントや接着剤などの歯科材料の劣化ではなく、それによって虫歯になってしまうリスクについてです。
では、どうしたら二次カリエスになってしまうリスクを減らすことができるでしょうか?
二次カリエスを防ぐ方法
◎定期健診に通う
虫歯の治療が完了した後も定期的に健診を受けることをオススメします。定期健診では、自分では確認できない細かな部分まで虫歯がないかどうかしっかりチェックします。ですから、痛みが出る前の虫歯の初期状態での早期発見や痛みを感じない失活歯(神経のない歯)の虫歯を早期に発見することができます。
歯医者さんは「歯が痛くなったら行く場所」ではなく、「痛くなる前に痛くならないようにいく場所」なのです。
◎治療してから数年経過している補綴は外して中を見てみる
痛くなくても、いっけん虫歯に見えなくても、治療してから数年経過している補綴物は外して中の状態を確認することをオススメします。外して中を見てみると、セメントが黒く劣化していたり大きく虫歯になっていたりすることも珍しくありません。
セメントが劣化しているだけの状態ならば、一度外して、新しいセメントで再度セットしたり、新たに作成した補綴物をセットしたりすれば済むのです。しかし、セメントが劣化した状態のまま放置された歯は、やがて歯と補綴物とのあいだに虫歯菌が侵襲し二次カリエスとなってしまいます。
失活歯は要注意!
虫歯の進行が重度で、縁下カリエス(歯肉下にまで及ぶ虫歯)になってしまった場合には治療が難しく抜歯となってしまう場合が多くあります。ではなぜ抜歯しなければならないまでに虫歯が進行してしまっていた歯に気付くことが出来なかったのでしょうか。
上記の写真は実際の症例です。この患者さん自身この歯に痛みを感じてはいませんでしたが、治療したのがどのくらい前だったか覚えていないということでセメントが劣化していることを予測して外して中を見てみた結果が右の写真です。歯肉縁下の虫歯のため細菌に侵された歯肉が赤く腫れているのが見てわかります。
レントゲン上で金属は真っ白くうつるため中の状態を確認することができませんが、実際に外してみると歯肉の下にまで及ぶ深い虫歯となっていました。
また、この歯は失活歯(神経のない歯)ですのでしみたり痛みを感じる事がありません。
そのため、知らぬ間にこの写真のような大きな虫歯になっていたのです。
失活歯(神経のない歯)が虫歯になっても痛みのシグナルを発しないため、「痛くなったら歯科医院に行く」のでは遅いという事がお分かりでしょうか?
自分の歯は生活歯か?失活歯か
自分の歯が、神経のある生活歯なのか、神経のない失活歯なのかは、歯科医院で撮るレントゲンで確認することが出来ます。上記のレントゲン写真を見ると、根管(歯根の内部)が白く写っているのが見えますね。
これは、根充材が写っているのです。これは、「治療を終えた失活歯は、のちの診断を容易にするための工夫として、根充材には造影剤が含まれているからです。ですので、例に示したレントゲンの歯は、神経の無いだと分かりますね。
補足ですが、造影剤が入っているのは根の治療を最後まで終えて根充した歯です。歯の神経の治療を途中で中断したり、虫歯が神経にまで達して神経が死んだまま放置されたりしている歯には、根充剤も入っていなくて、健康な神経もないという悪い状態ですので、早めに歯科受診が必要な状態です。
たとえ、しっかりと根管充填してある失活歯でも、被せ物をしてから長期間経っている歯は、たまに外して中の状態を確認することをお勧めします。
かかりつけの歯科医院では、どの歯にいつどのような治療を行ったかをカルテに記載し管理していますので定期健診の際に、何年あった歯かを歯科医に尋ねてみて下さい。
まとめ
詰め物や被せ物などの補綴物で修復して歯科治療を終えた歯でも、セメントの劣化や補綴物の寿命、不適合が原因となり再び虫歯となってしまいます。定期的に外して中の状態を確認することで大きな虫歯になってしまうリスクを軽減できますので、まだ虫歯になっていない歯はもちろんのこと、一度治療を終えた歯もしっかりメンテナンスしていくことが大切です。
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