親知らず抜歯後の激痛!ドライソケットになる確率

2018年02月13日 虫歯

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親知らず抜歯後の治まらない激痛に悩まされているあなたに読んでほしい、ドライソケットになる原因と確率について。抜歯の際、偶発症発生のリスクはさけられませんが、ドライソケットを未然に防ぐことは出来るのでしょうか?

親知らず抜歯後のドライソケット

抜歯をすると、麻酔が切れた後に痛みが出ることがあっても通常の場合、抜歯後の痛みは次第に弱くなっていくものです。痛み止めの薬を飲めば痛みは和らぎます。しかし、ドライソケットになると、2 ~ 3日後くらいから次第に痛みが強くなっていきます。ドライソケットになった抜歯窩からは臭いのあるガスが発生し、口臭も伴います。

 

ドライソケットとは

ドライソケットとは、抜歯の数日後にも痛みが続き、抜歯窩(ソケット)に血餅がないために歯槽骨が露出してしまった状態です。抜歯窩には本来あるはずの血餅がなく、患部の骨は口腔内細菌に侵されています。歯を抜いた傷に強い痛みがあります。冷温水による刺 激痛や飲食物による接触痛も強く、かなり耐え難い苦痛となります。痛みの範囲は、抜歯窩だけでなく、顎骨全体に広がることもあります。

ドライソケットの原因

「ドライソケット原因はあの歯科医歯のせいだ」と決めつけずに、冷静になって下さいね。

・患者によるうがい
ドライソケットの原因は、過度な「うがいによる血餅の形成不全」が主な原因と考えられています。血の塊が取れた抜歯窩に口腔内細菌が局所感染したというわけです。

・患部の骨の緻密さ
通常は、歯を抜いた後の抜歯窩(ソケット)は出血し、血液で満たされます。しかし、下顎の親知らず周囲は骨が緻密で硬いためにもともと血流に乏しく、出血が少ない部位なのです。ドライソケットの原因として患部の骨の硬さや緻密さも関係します。緻密な骨ほどドライソケットになり易いです。

・局所麻酔中の血管収縮薬
抜歯には局所麻酔が使われますが、日本の歯科用局所麻酔のほとんどは8万分に1の濃度の血管収縮剤が含まれています。口腔内は血管が豊富な為に血管収縮薬の添加がない麻酔薬を使うと、薬剤は血流に乗り、すぐに流れていってしまいます。これでは、効力がないばかりか、多量の麻酔薬も注射をしなければなりません。そこで、毛細血管を収縮させることで、少ない麻酔薬にとどめ、しかも長時間滞在させて、確実に痛みを取ることが要求されます。この血管収縮薬は、麻酔の量を減らし、効力を高める以外に術部の出血を抑え、手術をやりやすくします。この「出血を抑えるメリット」が、ドライソケットと関連している可能性があるかもしれません。しかし、この根拠を明らかにした論文は見当たりません。

ドライソケットの発生頻度

抜歯後のドライソケットの確率はどれくらいでしょうか?

結論からいいますと、親知らずの抜歯後ドライソケットになる確率は、おおむね3~6%です。しかし、15~25%という報告もあります。

論文によって、ばらつきが大きいので説明します。ドライソケットは全ての歯の抜歯で起こる可能性がある疾患ですが、今回は親知らずの抜歯後のドライソケットについて考えていきたいと思います。

この論文、「藤田訓也: DRY SOCKETについて. 日本歯科医師会雑誌30: 446-453 1977.」によると、ドライソケットの発生率は、普通の永久歯の抜歯例では2~4%ですが、下顎埋伏智歯における発生は15~25%と報告されています。下顎深くに埋まっている親知らずは他の歯よりも7倍ドライソケットになりやすいという結果です。しかし、下顎埋伏歯の4本に1本がドライソケットになるという数字は、あまりにも大きすぎて、不自然です。他の論文も見てみましょう。

他の論文で1995年の愛知学院大学歯学部の調査ですが、下顎埋伏智歯の抜歯1146症例中62例がドライソケットになったとのことです。つまり、下顎の親知らずの抜歯でドライソケットになった確率は5.41%です。

下顎埋伏智歯抜歯の臨床的研究 第2報: ドライソケットについて
Clinical findings after the surgical removal of impacted mandibular third molars. II. Dry socket.著者:河合俊彦 (愛知学院大)、後藤満雄 (愛知学院大)、梅村昌宏 (愛知学院大)
日本口腔外科学会雑誌 巻:41 号:11 ページ:997-999:1995年11月
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjoms1967/41/11/41_11_997/_pdf/-char/ja

また、群馬大学医学部口腔外科学講座の茂木健司先生の調査では、ドライソケットになる確率は3.2%でした。開業医としての経験が長い私の感覚では、これくらいの数字が妥当だと思います。

ちなみに、群馬大学医学部口腔外科学講座の調査では、正常に治癒するのは84%であり、ドライソケット以外の異常治癒は12.8%でした。

 

岩手医大の調査も見ておく必要があります。1973年第18回日本口腔外科学会総会で報告されたものです。「経験1年未満の術者によって行なわれた永久歯抜歯1057例の結果です。」もちろん日本の多くの歯科医は1年目の歯科医師よりも知識も経験もあり、技術も高いことでしょうし、大学病院の歯科口腔外科には難易度の高い抜歯患者が集まっているはずですから、この数字を全国平均とは言えなと思いますが、3.2%がドライソケットになったそうです。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/stomatology1952/29/3/29_3_449/_pdf

ドライソケットは、抜歯窩の血餅が無いことにより引き起こされるとされていますが、この研究では、抜歯後にドライソケットになった人と、ならなかった人の血餅の状態の違いも観察しています。それによると、ドライソケッ トになったケースでは、抜歯後1日 で抜歯窩が血餅で満たされている症例はたった、16.7%しかありませんでした。しかも、3日後 には血餅が抜歯窩を満 たす症例は全くみられず,14日後も同様に血餅がありませんでした。つまり、抜歯後の傷が治らないばかりか、歯を抜いた穴に血の固まりすら無いことを確認しています。当然露出した歯槽骨は口腔内細菌に感染しています。

では、ドライソケットになってしまった場合、どれくらいの期間で治ったのかをみてみましょう。同じ論文です。

 

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