「痛くない虫歯」があるって本当?チェックする方法とは
虫歯はどこまでが痛くない?
よく歯科医が歯の検査をするときに、「C1」とか「C2」とか言うのを聞いたことはありませんか? 「C」というのは「カリエス」の略、つまり虫歯(う蝕)のことを示しています。虫歯としては、C1よりもC2のほうが悪い状態。さらに悪いとC3、C4まであります。C4ともなれば、歯のほとんどがなくなって根っこまで虫歯になってしまった状態。ここまでくると抜かざるを得ない状況になってきます。
私が歯科大学で勉強していた頃は、このC1からC4までしか習いませんでした。しかし近年、このC1よりも手前に、「C0」と書いて「シー・オー」と読む状態があることがわかってきたのです。
歯の表面を覆っているエナメル質までが溶けて穴があいてしまった状態がC1ですが、実はこのあたりまではまだ痛みなどの自覚症状がありません。穴があいていても「痛くない虫歯」が存在するのです。痛くないうちに治療できれば、時間もそんなにかからないでしょう。そのさらに前の段階が、C0です。C0は実質欠損がない、まだ歯に穴もあいていない状態。もちろんこちらも「痛くない虫歯」ということになります。
痛くない虫歯の原因は生活習慣にも
C0は、歯の表面のエナメル質がわずかに溶けてダメージを受けている状態です。これはいわゆる「脱灰」と呼ばれるもの。口の中では日々脱灰が起きていますが、歯のケアや唾液の力によって「再石灰化」し、修復されています。しかし痛くない虫歯「C0」と診断された方は、日常的にこの脱灰の頻度が高くなっていることが疑われます。
歯は、酸性の食べ物や虫歯菌、プラーク(歯垢)などの影響で毎日脱灰を起こしています。酸性の食べ物といえば、ヨーグルトやオレンジ、酢などのすっぱいもの。甘い糖質は、虫歯菌のエサとなって虫歯菌が歯を溶かすのを助けてしまいます。ヨーグルトドリンクなどは酸も糖分もたっぷり入っていますから、歯にとって大敵とも言える飲み物です。また食べたときの食べかすは、唾液による再石灰化を邪魔するプラークとして歯にこびりついていきます。
たとえば、いつも家でコーラなどの炭酸飲料や甘いジュースを水代わりにして水分補給しているお子さん。サッカー少年など、汗をかく場面ではスポーツドリンクが良いと言われますが、砂糖がたっぷり入っているので歯にとってはかなりマイナスです。できれば麦茶にして、塩分をまた別に摂取してほしいところです。
またおやつが大好きで間食が多かったリ、いつも飴をなめているのが習慣づいてしまっているような場合。そうした生活習慣は歯の再石灰化の妨げとなり、C0を引き起こす原因となります。今はまだ自覚症状がなく「痛くない」という方も、そのままの習慣を続けることでゆくゆくは虫歯になってしまう可能性が高いのです。
大人にもすすめたい定期的な歯の健診
子どもの頃は学校で歯の定期健診がありますから、この「痛くない虫歯」も発見されやすい環境にあります。ただ、学校の体育館などで歯科用のライトがない場所で行われる簡易的な検査には限界があるでしょう。その上、以前は学校の健診で使用が許されていた探針が使えなくなり、さらに虫歯が見つけにくくなっているのが現状です。
探針は歯に直接触れて虫歯がないかを探る針のような道具なのですが、不用意にガリガリとやって歯を傷つけてしまうことが懸念され、使用が制限されました。ただ、歯科用ライトのない中、暗い口の中の虫歯を見つけるのはなかなか難しい仕事です。その上そこへプラークがこびり付いていたら、プラークの下に虫歯があっても見るだけではわかりにくいですよね。私は使用方法さえきちんとすれば探針を使用したほうが効果的なのではないかと考えていますが、ここは意見が分かれるところです。
いずれにせよ、「痛くない虫歯」は自覚症状がないわけですから、定期的な歯科健診によって早期発見し、早期対策をすることが望ましいと言えます。子どもだけでなく、大人も時々歯科医院で健診してもらってください。C0の状態なら、生活習慣を見直すだけで改善できることがあります。ひどい虫歯になってしまう前に、痛くないときから歯の健診をすることで、いざというときの治療も最短。治療費も一番少なく済みます。
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