抜歯後のインプラント治療流れ。待時埋入で確実に!
抜歯して歯を失ったところにデンタルインプラントで歯を回復する場合の治療の流れについて説明します。
待時埋入といって「抜歯した骨が回復するのを待ってからしっかり骨にインプラントを埋入する方法」がメリットが多く一般的ですので、これを解説します。
抜歯後のインプラント治療の流れ
1.CT撮影をして抜歯窩の様子を確認する
まずは、骨量や骨質や骨幅などの確認を行う必要がありますので、歯科用CTを撮影し、診断して待時埋入が適している事を確認し、コンピューター上でインプラント埋入手術のシミュレーションを行います。
このときに、埋入するインプラントのサイズ決めます。さらに骨造成術などが必要かどうかを判断し、造成する量もシュミレーションソフトで測定しておきます。
2.術前PMTC/術前写真、レントゲンなどの撮影
手術日当日の術前にも口腔内清掃と消毒は行いますが、歯石除去などのような時間をかけて行う施術は事前の通院で終えておきます。そうすることで手術日の時間短縮になるだけでなく、事前に口腔内細菌の数を減らしておくことを目的としています。
術前の口腔内写真やレントゲンを撮影しておくことで、治療計画の資料や術後との比較や経過観察に役立ちます。その時の状態をその時に記録しておかなければ後から振り返ったり比較したりすることが出来ないため、レントゲンや口腔内写真での治療記録を取ることは大切なことです。
3.インプラント体埋入手術(1次オペ)
インプラントの手術は基本的に2回に分けて行います。インプラントを骨に埋入する1次手術と歯肉からの頭出しの2次手術です。一回目の手術でインプラントを完全に歯肉に埋没させる理由は、「インプラント体は骨としっかり結合するまでの間に外部からの刺激を与えないため」です。外部からの外傷や振動が加わることでインプラントを揺らしてしまうならオッセオインテグレーション(インプラント体が骨としっかり結合する現象)の可能性は減少するからです。従って、1次手術と2次手術の二回に分ける2回法が一般的です。
一回法というのもありますが、これは別の項で解説します。
4.治癒を待つ(インプラント体と骨との結合を待つ)
インプラント体を骨に埋入して最初の1カ月の間は、インプラント体は骨としっかり結合しているわけではなく、機械的に骨に食い込み付いている状態です。まだ科学的に細胞レベルで骨としっかり結合するまでにはさらに数カ月が必要となります。
その期間は上下の顎で違いますが、下顎で3カ月、上顎で6カ月が基本です。(ただし光機能化インプラントの場合は、骨と付く期間が短くできますが、これは「茨城県インプラント治療情報ネット」で解説していますので参考にして下さい。)
さて、治癒期間の重要ポイントは「インプラント体と骨が結合するまでの期間に外部からインプラント体を揺らす力が加わった場合、骨結合の可能性が大きく下がる。」という事です。論文によると、50-200ミクロンでもインプラント体を動かしてしまうだけで骨とインプラントの間に軟組織が侵入し、骨結合を邪魔してしまうというのです。
これは何もインプラント治療に限った話ではなく、骨折した時も同じことが言えますよね。
骨折してもしっかりと固定しておけば骨と骨は再び結合しますが、ギブスでしっかりと固定せずに、動かしてしまえば骨折は治らないのですから・・・。「骨細胞は動かしたら治らない」と覚えて下さいね。
5.2次手術(1次手術を2回法で行った場合)
手術と言っても、大がかりな施術ではありません。歯肉レベルの治療になりますので、1次オペの時のように骨は削らないので、術後も大きく腫れる心配はありません。抜歯も骨に穴が開きますよね。二次手術は骨に穴を開けませんから、抜よりも少ない侵襲です。「歯を抜いた時よりも楽な治療だ」と思って良いです。
2次手術では、骨に埋入したインプラント体にヒーリングアバットメントを接続します。
「ヒーリング」とは「治癒」の意味ですが、歯肉の形を最終的なアバットメントの形にするための一時的なアバットメントを付ける手術です。縫合した場合は1週間後に糸を取るために来院します。
抜糸後は数週間ほど傷が癒えるのを待ってから最終的な歯を作製するための歯型採りを行ないます。
6.最終的な歯型採りから最終補綴物の装着
最終的な歯型を採り、この歯型は技工所に送られます。設計や欠損部位や歯数によって異なりますが、1回で完成ではなく多くの場合、複数の来院が必要です。完成前にもう一度かみ合わせを採ったり、歯の形の確認をしたりします。治療と治療の間は2~3週間あけて来院してもらいます。
何度か来て頂き、形やかみ合わせを確認しながら修正をしておくことで完成時の修正が少なくなります。せっかく研磨されてきれいに仕上がってきたものに傷をなるべく入れないためにも完成前の試適が大切なのです。
最終補綴物の装着後は、術後の口腔内写真やレントゲンを撮影します。これからメンテナンスを通じてインプラントの経過観察をしていくうえで術直後の記録が比較の参考となります。
7.定期的にメンテナンスを行う(定期検診)
普段生活をしているうえで、自分では気付かないような異変にもいち早く気付けためにはメンテナンスが欠かせません。インプラントには歯の神経や歯根膜といった痛みを伝える信号が無いため、問題があっても痛みなどの自覚症状が現れません。痛みを頼りに自己判断するのは危険です。
もし、痛みなどの症状が現れたときには相当悪くなっていることが多いので注意が必要です。痛みを頼りに自己判断するという事はやめて下さい。
せっかく治療した歯ですから、専門家の診査を継続して受けながら、しっかりと守っていきましょう。そしてデンタルインプラントのみならず、残存している歯があればその歯の検診も一緒に行うことをおすすめします。
まとめ
デンタルインプラントの材料の進歩は十分進みました。治療技術も確立しています。しかし、医療技術が進んでも、人間のもつ治癒再生能力の速度は変わりません。抜歯後や埋入後の治癒待ちの期間はしっかりと待たなくてはいけません。歯科医に「早く!早く!」という強い要望を出し過ぎて、患者のプレッシャーに負けた担当医が判断を誤り、治癒期間を短くした場合に悪い結果が出る心配がありますので、「傷の治る早さを歯科医に求めてはいけない」事はご理解下さい。
どんな病気が治るにも「時間」という要素は必要です。デンタルインプラントの価値、治療効果が高いと考えるならば、十分に待つ気持ちを持って治療に望むと良い結果が出やすいと思います。
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