奥歯にはインプラントを選ぶべき?それともブリッジ?
もし「抜歯しなければいけない」と言われたら
歯ブラシが届きにくい奥歯の虫歯や、歯周病で悩んでいる方は多いのではないでしょうか。中には長年放置したあと、ぐらぐらになって抜かざるを得ない状態になってしまってから当医院へ駆け込んでくる患者さんもいます。そこで初めて奥歯を抜かなければならないということを知り、インプラントにするのか、またはブリッジなのか、治療方法の選択を迫られることとなります。
奥歯も抜歯してしまうと銀歯などの被せ物では対処できませんから、人工歯根を埋入して人工歯を付けるインプラントにするか、その箇所に応じて入れ歯やブリッジを選択します。保険適用内でなんとかしたいという患者さんなら、奥歯にも入れ歯やブリッジを選びたいと考える方が多いかもしれません。ちなみにブリッジというのは、隣り合った健康な歯を削って、3本ほど人工歯が連なったものを被せる施術のことです。
確かに、ちょっと歯が痛いから歯科医院へ行って「すぐにでも抜歯しないといけない」と言われたら。しかも保険適用外の場合は治療費も高額になることを告げられたら、動揺してしまってなかなか即答できるものではありませんよね。インプラントなどの保険適用外の治療をするとなると、実は抜歯から保険が適用されません。同じ抜歯をするのにも、その後の治療が保険適用内か外かで治療費が変わってきてしまうのです。
奥歯の欠損は健康な歯まで危険にさらす可能性が
奥歯と言っても親知らずは例外ですが、その1つ前の7番の奥歯などがなくなってしまった場合は注意が必要です。保険適用のブリッジや入れ歯では、その手前の6番や5番の歯にひっかけるような形で人工歯を付けることになるからです。両隣にある歯で支える通常の入れ歯やブリッジとは違って、片側だけに強い力がかかることになりますよね。そうすると食事でかむとき、人工歯を留めている6番や5番の歯をてこの原理で引き抜くように強い力がかかってしまうのです。
かと言って、「インプラントはお金がかかるし、奥歯なんて見えないからそのままでいいか!」などと抜けたまま放置してしまうのは大変危険です。そこに歯が何もなければ、噛んだときにその他の歯だけがかみ合うことになりますよね。本来は奥歯がしっかりかみ合っていることで前歯などに必要以上の力がかかるのを防ぐ「バーティカルストップ」が成り立っているのですが、それが崩壊してしまうのです。
バーティカルストップの崩壊が起こると、特に前歯に大きな負担がかかってしまいます。欠けてしまったり、ひどくなると取れてしまうようなことも。奥歯がどれだけ重要な役割を果たしているか、おわかりいただけたでしょうか。
2年でダメになってしまうなら、一日でも早くインプラントを
それだけ重要な役割を担っている奥歯ですから、歯科医としてはやはりインプラントをおすすめします。インプラントは人工歯根を骨に埋め込むので、その1本でしっかりかむことができるからです。入れ歯やブリッジは隣の歯にかむ力を負担してもらうもので、重要な奥歯に力がかけられていない状態になりますから、バーティカルストップの崩壊を防ぐことも難しいと考えられます。
歯科医院によっては、「できるだけ抜歯しない」という方針のもと、いずれ抜かなければならない歯もインプラントやブリッジにしないで温存することがあるようです。患者さんはそれをありがたがる傾向にあるのですが、結局のちのち抜歯するのであれば二度手間になりますし、2年ほどでダメになるような歯を残しておくのは歯周病など他の歯に悪影響を与えることも。目安としては、5年残せるなら残すべきだという指針があります。
さらに言えば、抜歯する必要がある歯はその場でインプラント手術を行うこともできます。土台となる骨がやせていく前に行えるので、本当はそれがベストなのです。ただ、初回からインプラント治療というのも患者さんが面食らってしまいますから、当医院の場合はまず「ソケットプリザベーション」という治療をおすすめしています。
ソケットプリザベーションとは、抜歯した後に人工骨だけ入れておく処置をすることです。そうすると骨のやせ方が少なく、あとでインプラントの施術をするまで土台となる骨を温存しておくことができます。また、歯ぐきもしぼみません。この場合も保険はきかない抜歯になりますが、奥歯を抜いただけではどんどん骨がやせていきますから、あとでインプラントをしようと計画しても骨を補充する施術から行うことが必要になってきます。
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