インプラントか入れ歯か、悩む人に教えるメリットとデメリット
もちろん、インプラントをおすすめしない場合も
歯周病などで歯を失ったとき、入れ歯にするかインプラントにするかで悩む方は多いのではないでしょうか。一口に「入れ歯」と言っても、保険がきく安いものから保険がきかない高価なものまでありますし、総入れ歯なのか部分入れ歯なのかということでも変わってきます。また、みなさんが入れ歯と悩むインプラントにもいくつか種類があります。「その患者さんがどういう健康状態か」ということでも選び方は変わってくるでしょう。
「インプラントが一番いいんでしょ?」という認識の方が多いと思いますが、たとえば寝たきりのお年寄りで歯がすべてなくなってしまっているような方には、みなさんがイメージされる完全固定式のインプラントを私はあまりおすすめしません。自分で歯磨きができるならいいのですが、介護が必要な状態の場合は固定式のインプラントだとかえってメンテナンスが大変になってくるのです。
入れ歯なら取り外してきれいに洗えますから、介護する方にとっても負担の少ないものとなりますし、なにより口腔内を清潔に保てますよね。口の中に細菌が繁殖すると、肺炎のリスクが高まることもわかっています。命を守るためにも、やはり寝たきりの方に固定式インプラントはおすすめしません。
取り外しできるタイプのインプラントにも注目
実は、インプラントにも固定式ではないタイプがあります。多くの方がイメージする総入れ歯の代わりになるインプラントは、6本柱となるインプラント体(人工歯根)を埋入して、人工の歯ぐきと人工歯を完全に固定するタイプのものだと思います。しかし、それとは別に2~4本柱のタイプがあるのです。「オーバーデンチャー」というもので、前歯側に2~4本のインプラント体を埋入して、着脱式の入れ歯が装着できる形となっています。
このタイプは患者さんご自身で着脱できるので、取り外して簡単にきれいに洗えますし、口の中に菌が繁殖しやすい寝るときも外しておけます。カチャッとしっかりくっ付くので、すぐずれたり外れたりということもありません。人前で入れ歯が外れてしまって恥ずかしい思いをすることもなくなるのです。入れ歯と完全固定式のインプラントのいいとこ取りと言ってもいいかもしれません。
若いうちは6本柱の完全固定式インプラントにしておいて、年齢を重ねて歯磨きが難しくなってきたときには着脱式のインプラントオーバーデンチャーにチェンジするのもおすすめです。従来の入れ歯をしている方は、「歯ぐきの肉が当たって痛い!」などとよく言いますが、歯ぐきは元々ものを食べるようにはできていませんから、これは当たり前のことです。人工歯根であるインプラントを埋入することで、そうした不具合が解消されます。入れ歯より安定感があり、安心できるのもうれしいポイント。気になる費用も、6本インプラントを埋め込むより安く抑えられます。
総入れ歯になってしまうような方の場合は、歯の健康に対する姿勢も問題だと私は考えています。事故で歯を失ってしまった方は別ですが、すべての歯を失うまで歯のケアができていなかった方が、治療後にはしっかり心を入れ替えてケアできるようになるかどうか。それによって、ていねいな歯磨きやメンテナンスが不可欠の完全固定式インプラントにするか、着脱式インプラントにするのか、入れ歯にするのかが決まってきます。いくらお金をかけてインプラントにしても、その後のケアがきちんとできないようでは台無しです。
脳への刺激にも関わってくる歯の治療
残念ながら、インプラント治療は保険がききません。保険適応の入れ歯と比べると高額な治療になってくるのは経済的なデメリットと言えるでしょう。保険の入れ歯はだいたい9万円ほどで、患者さんはその3割負担で済みます。70歳以上なら1割負担ですから、1万円ほどでできてしまうのです。それに対して6本柱のインプラント入れ歯は、自由診療なので幅がありますが、総額にして200~300万円にもなってきます。インプラント体を埋入する骨が薄くなってしまっている場合は、その骨を増やす手術から行わなければなりません。
しかし、みなさんが入れ歯よりインプラントを選ぶのには理由があります。保険適用内の入れ歯は食事でかむときに痛みがあるとか、口から飛び出して味噌汁の中へ落っこちてしまったとか……そんな体験談も聞きますが、それだけではないのです。インプラントは人工歯根を埋入するものなので、入れ歯よりもかむときの刺激が脳に伝わるようになります。
よく、胃にチューブで直接栄養素を送る胃婁をするようになると、口でかまなくなるために脳血流が下がり、歩けなくなったりするという話がありますよね。きちんと噛めない入れ歯にも同じようなことが起こり得ます。保険が適用されないというデメリットはありますが、いつまでも健康に暮らしていくために選ぶなら、やはり入れ歯よりもインプラントです。特に若い人には、脳に刺激を与えて活力を生み出してくれるインプラントをおすすめします。
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