矯正で歯を動かす仕組みをタイプ別に説明

2018年12月01日 矯正

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歯科矯正治療において歯を動かすために、矯正力を加えるわけですが、そのために利用する矯正装置の仕組みをタイプ別に解説します。といっても歯を動かすというのは、歯を押すか、引っ張るか、回転力を加えるかということに尽きます。動力は【ゴム】と【バネ】と【患者自身の筋肉】の力です。わかりやすく、簡単に仕組みを説明します。

種類別の矯正の仕組み

先ほど説明した「歯を動かす方法」はマルチブラケット法(ワイヤー矯正)に使う仕組みです。「ワイヤー矯正」の他にも「マウスピース矯正」という矯正装置もあります。この2つの矯正装置の種類は歯を動かす原理や仕組みが異なるため、歯を動かしたい方向によってそれぞれに得意不得意があります。

 

マウスピース矯正装置

マウスピース矯正
これは、見えにくい矯正装置として有名な方法です。透明なマウスピースを使った矯正法です。歯を動かしやすくするために歯面に接着されたアタッチメントがマウスピースの引っ掛かりとなって歯を動かします。アライナー(マウスピース)は少しずつ形が違っており、1~2週間に1回のペースで交換を繰り返しながら理想的な歯列へと徐々に動かしていきます。
理想的な歯列に近づけた若干合わないマウスピースを無理やり噛んではめ込み歯を動かすこの矯正装置では、低位の歯を引っ張り上げる場合や、傾斜歯を起こしたい場合などのような矯正治療には向かず叢生などの歯列の乱れを治す矯正治療に適しています。

ワイヤー矯正装置

ワイヤーブラケット矯正ともいいます。歯面にブラケットを接着してそのブラケットにワイヤー、ゴム、バネなどを装着し、歯に矯正力を加えます。引っ張る力にはゴムの収縮する力を、押す力にはバネが伸張する力を使用できるのでマウスピース矯正と比較すると対応できる症例の数がとても多いです。

 

 

咬合関係によってはブラケットを装着できない場合(過蓋咬合など)にはワイヤー矯正が難しいこともあります。一般的にはブラケットとワイヤーは、唇側に取り付けますが、舌側に取りつける方法もあります。これを舌側矯正といいますが、舌側矯正には、矯正装置が人から見えないというメリットもありますが、デメリットもあります。一般的な歯科矯正装置は唇側に付けるものです。なお、唇側に取り付けても見えない矯正装置もあります。歯と同じ色のセラミックで作ったブラケットを使うものです。次にワイヤー矯正の場合にどのように歯を動かすかをみていきましょう。

歯列をゴムで動かす方法

 

ゴムのリングが連なった形のゴムを用います。伸ばした上程でブラケットに装着します。するとゴムが元の形に戻ろうとする力で歯を引き寄せます。持続的にゴムの力を加えることで歯は動いていきます。ゴムのリングの間隔を変えたり、ゴムの厚みを変えたりすることで、矯正歯科医は、歯を動かす力をコントロールすることができます。

この他、歯を動かす目的は違いますが、上の歯と下の歯をつなぐ「顎間ゴム」を使う方法もあります。

歯列をバネで動かす方法

 

口の中に入れるばねですから錆びてはいけません。矯正用専用の精密な「ばね」を利用します。歯に取り付けたブラケットにワイヤーをわたすのですが、そのワイヤーの周りを囲むように取り付けます。先ほど歯と歯の間を縮めるために「ゴム」を使いましたが、この「ばね」は逆に、歯と歯の間を広げるために使います。また、傾斜歯を起こすときにも使います。「ばねが戻ろうとする力」を使うメカニズムです。ワイヤーについている「ばね」を見て、「これなんだ?」と思っていた方もいたかと思います。分かってしまえば簡単ですね。矯正歯科医は、バネの種類や、あらかじめばねを伸ばしておく量を調節することで、歯に加える力をコントロールします。

歯列を形状記憶合金で動かす方法

 

これは、歯に取り付けた「ブラケット」に装着するワイヤーです。歯並びをなおすのにワイヤーを使う方法をとることは知っていても、ワイヤーを行かう意味を知っている方は少ないと思います。

このワイヤーには形状記憶合金が使われます。つまり多少なら曲げても元の形に戻ろうとする性質を持っています。それを利用してワイヤーの形を理想的な歯並びの曲線に作っておきます。これを歯に装着することで、歯並びを理想の位置に並べようとする力が働くというメカニズムです。

ワイヤーの断面は、丸と四角があります。丸の断面のものは歯の傾斜移動が得意です。断面が角のワイヤーはさら歯体移動、平行移動が得意です。矯正歯科医はワイヤーの金属の種類やワイヤーの太さを巧みに操り、理想的なタイミングで狙った方向に適切な力を加えていきます。これが、矯正用ワイヤーを使った歯が動かす方法です。実際には、矯正専門医がここにゴムやばねを利用して歯を動かしていきます。

 

歯を動かす方向で動かしやすい難易度は違う

1.叢生(捻転などによって多少凹凸のある歯列)を修正する

多少の歯列の凸凹の修正であればマウスピース矯正でもワイヤー矯正でも行うことが出来ます。引っ込んでいれば引っ張り、出っ張っていれば押して歯を動かしていきます。


2.傾斜歯を起こす

マウスピース矯正は、奥歯をアンカーにして前歯の傾斜を治す方法は得意ですが、奥歯の傾斜を治すのはやや苦手です。傾斜歯を起こす場合には歯冠部を引っ張って起こす必要がありますが、奥歯には噛む力が引っ張る方向と逆に加わりますので、マウスピース矯正で傾斜歯を起こすのはやや困難です。奥歯の傾斜歯を起こすのは、マウスピース矯正よりもワイヤー矯正治療が向いている場合が多いです。つまり、奥歯の傾斜歯の場合はワイヤー矯正では難易度は「やさしい」が、マウスピース矯正では難易度は「難しい」となります。しかし、前歯の傾斜歯の場合は、どちらの方法でも「優しい」といえます。


3.廷出歯を押し戻す

引っ張るのが苦手なマウスピース矯正ですが、押し戻すことはできますのでマウスピース矯正でも廷出歯の矯正は可能です。しかし、一つの歯を押し戻すためのマウスピースが、その歯を押しもどせず、隣の歯を引っ張りだしてしまうかも知れません。

マウスピース矯正が悪いのでなくて、「マウスピースを使う人の上手下手」に左右されるのです。しかし、ワイヤー矯正装置には、この点において患者の上手下手がありませんから、上下的に歯を動かす確実性は、ワイヤー矯正の方が確実です。


4.転位歯を平行移動する

矯正治療において平行移動はとても難しく、歯槽骨の薄い前歯部では矯正力をかける場所を誤ってしまうと歯根露出などにも繋がりかねません。ですからこの矯正の場合には平行移動が得意で、より狙った方向に矯正力を加えられるワイヤー矯正治療が確実です。

しかし、マウスピース矯正も「アタッチメント」と呼ばれるプラスチックの突起物を使う方法により、歯の平行移動もできるのでご安心ください。


5.低位歯を廷出する

上下的な歯の移動は難しいことを前文でお伝えしましたが、歯を引っ張り上げるこの矯正の場合でも同様の難しさがあります。マウスピース矯正よりも、歯を引っ張ること得意とするワイヤー矯正の方法が早くて確実でしょう。もちろん、インビザラインなどのマウスピース矯正で出来ないわけではありません。

このように動かしたい方向とその度合いなどによって難易度変わります。矯正装置の種類はこの難易度によって判断されます。インビザラインなどのマウスピース矯正と真理地ブラケットなどのワイヤーブラケット矯正を併用することもあります。

まとめ

自分の歯並びには、どのような矯正治療が適しているのかは矯正歯科医に診てもらい診断を受けるべきです。自宅や職場から通える範囲の「歯科矯正を行なっている歯科医院のホームページ」をみて下さい。矯正専門の歯科医院でなければ、通常の歯科治療のかたわら矯正相談をすれば、特別な診断料がかからないかも知れません。当医院のように日本矯正歯科学会認定医による矯正相談を無料で受けることができる歯科医院もあります。そのような歯科医院を見つけたら、相談だけでもしてみることをお勧めします。

ここではワイヤータイプの矯正とマウスピースタイプの矯正に触れましたが、どちらの矯正治療が向いているのかは、自己判断せず自分の希望をもとに専門家の判断に従いましょう。どちらの矯正装置にもメリットとデメリットがそれぞれありますから、十分に説明を受けて納得してから治療を受けるようにして下さいね。

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