大人になってからでも矯正は始められる?
大人の矯正治療が難しくなっている理由
歯科医にとって一番矯正治療がしやすい年代は恐らく高校生くらいでしょう。すでに永久歯列が生えそろって、顔の成長も終わっている時期だからです。その頃には、歯の根っこの先端までしっかり成長しきっています。それでいて、骨はまだやわらかい。矯正をしていく上でも、歯がとても動きやすいという利点があります。
高校生なら、まだ虫歯も少ない場合が多いですよね。年を重ねるほど虫歯のリスクは増していくものです。大人になって骨が固くなり、歯も動きにくくなってしまっている上に、たくさん虫歯ができてしまった後だとその辺りも考慮して矯正をしていかなければなりません。その分、治療の仕方もだんだん複雑になっていきます。
もっと言ってしまえば、高校生は大人のように日々の仕事の忙しさに振り回されて治療をおろそかにしてしまうようなこともないですから、比較的治療がスムーズに進む傾向もあります(笑)。
矯正治療をしたほうが良い大人は意外と多い?
大人になり、30代、40代、50代になってから矯正治療を始める場合。50代にもなると骨はかなり固くなっていることが多く、歯周病が進行していることもあります。年齢を重ねるほどに歯はすり減ってくるので、その分調整しにくいという点も懸念されます。高校生のときにはない、大人ならではの矯正治療の難しさが出てくるのです。そうなれば歯科医にとっても大がかりになってくるので、中には矯正治療を始めること自体、躊躇する先生もいるかもしれません。
しかし、私が大人の患者さんにインプラント治療をしている中でも、「これはまず矯正をしたほうがいいな」と思うケースは少なくありません。というのも、その歯がインプラントにしなければならないほど悪くなってしまったのは、かみ合わせの悪さが原因になっていることがあるからです。
「歯並びが悪いから、こんなにひどい虫歯になってしまったんだな」と明らかにわかる歯なのに、虫歯1本だけそのまま直しても、また同じ軌跡をたどって悪くなってしまうことが予想されます。そうならないためにも、まずは矯正で歯を整えてから治していきましょうという提案をさせていただくことがあるのです。
将来の歯の健康を守るために必要な矯正
虫歯の治療に来たのに、「まず矯正からしましょう」と言われたら、ちょっと驚きますよね。矯正は自由診療で保険も効きませんから、費用も多くかかってしまいます。それに、大人になってからの矯正は、高校生の頃とは違って大変な分、治療期間も長くなる傾向にあります。でも、矯正をする必要がないのに歯科医が「矯正をしましょう」と提案することはありません。特に手間のかかる大人の矯正を勧めるときには、それだけの覚悟と理由があるのです。
大人になって矯正をしている方を見ると、「見た目をきれいにしたいから矯正しているのかな」と思う方がいるかもしれません。必ずしもそうではないのです。審美的な意味だけの矯正ではなく、歯の健康を守るための矯正があります。長い目で見れば、今しっかり歯並びを治しておくことが将来の歯の健康にもつながっているのです。
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