矯正の治療には、どれくらいの期間が必要か

2017年09月25日 矯正

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気になる「あの器具を付けている期間」

昔から歯並びが気になっていた方も、歯科治療の中で「矯正をしたほうがいい」と勧められた方も、まず気になるのは「どれくらいの期間、あの器具を歯に付けていなければいけないの?」ということでしょう。みなさん初めての経験ですから、その期間が気になるのもわかります。私が患者さんに矯正を勧める際にも、よく聞かれる質問です。

しかし矯正の場合、期間は本当にケースバイケースとなってきます。一番シンプルな例から挙げてみると、お口の中に虫歯が一本もなく、歯並びだけが悪いから治そうというもの。その場合は、歯並びの程度によってもまた変わってきますが、本当に程度が軽いと中には1年かからない方もいます。重度でないものなら、まだそこまで骨が固くなっていない若い方でだいたい2年ほどではないでしょうか。

歯科医としては、歯も顔の成長も終わっている高校生くらいで矯正をするのが一番動きやすくてやりやすいのですが、年齢を重ねるとだんだん骨が固くなり、歯も動きにくくなってきます。歯の位置のずれも、年齢が高いほど時間をかけてずれていますから、それを治すときにはその分の期間がかかってくるわけです。

たとえば若い人の歯のずれは、乳歯が生え変わったときにその位置に生えてきたというケースが多い。大人の場合は、そこから年月を重ねてさらにずれてしまった状態なのです。かんでいるうちに力がかかって歯が動いてきたり、倒れてきたり。かんで倒れるということは、歯に負荷がかかっている証拠です。周りの骨も固いですから、必然的に期間も延びてきます。

どの程度までの理想を目指すかによっても期間は変わる

極端な例もお話しましょう。私のところへ治療に来た30代くらいの女性の患者さんなのですが、矯正をしていた形跡があったので期間を聞いてみると、なんと「10年かかりました」とのこと。理想で言えばもう少し矯正したほうがいいかなと思うところではあったのですが、最初の状態から比べればかなり良くなったといいます。さらに時間をかけるのは精神的にも難しいだろうということで、断念しました。

彼女の場合、歯を強く食いしばってしまうクセがあり、それが矯正の期間を長くした原因だったのではないかと推測します。せっかく矯正して歯を動かしているのに、ぎゅーっと食いしばってしまうことで歯に力がかかり、矯正しているのとは違った方向へ歯が動いてしまうのです。食いしばると、あごも沈んでしまいます。そうした中でがんばってリカバリーしながら矯正をするのに、10年かかったということでしょう。

矯正が目指すのは、人類の平均から算出した理想の歯並びです。その理想の完成形まではいっていませんが、間違いなく十分な状態にまでは改善したのだから、この矯正は成功と呼んでいいと思います。また歯並びを悪くしている原因がある場合は、そのクセを治していく努力も大切です。

矯正と同時に行っていかなければならない治療

大人の場合、単純に矯正だけ行うというケースはそこまで多くないかもしれません。かみ合わせが悪い状態のまま大人になるまで過ごしたわけですから、そこへ虫歯ができたり、歯周病になってしまったりする方も多いでしょう。そうしたお口の中を治療していく一環で矯正をするとなると、まずは虫歯や歯周病を治すところから始まります。

しかし、歯科医もときには同時進行で、できるものは一緒に行って効率をアップしています。一つひとつの治療を順々にやっていくよりも、たとえばインプラントの仮歯まで入れたら矯正を開始、本歯ができるまでの間も歯を動かしていく……というようなことを積み重ねて、期間を短縮。できるだけスピーディに治療が進むように計画しているのです。

ただし、性急に治療してしまうことのリスクも歯科医は知っています。期間を短くしたいからと急いで歯を動かそうとすると、歯の根っこが短くなってしまう「歯根吸収」などを起こす可能性があるのです。そこは慎重に、ていねいに施術する必要があります。できるだけ矯正期間を短くしたいという患者さんの気持ちもわかりますが、安全のためにもある程度は長くなってしまうことをご理解いただければ幸いです。

 

 

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